ナノ空間材料研究紹介(旧)

ナノ空間材料の構造制御と反応・分離プロセスの開発」   関連論文リスト

物質科学と反応操作・分離操作を融合させた新しい化学工学の創成が必要であると考え、自己組織化・自己集合を利用した「ナノ空間材料の合成・構造制御」および「ナノ空間の物質移動が関与する反応操作・分離操作」に関する研究開発を行っています。

(1) 分離膜:ゼオライト膜, カーボン膜, メソポーラス膜

「膜分離法」は、相変化を伴わず、連続分離が可能な省エネルギープロセスです。特に、高分子膜に比べ、耐熱性、耐薬品性、機械的強度に優れている無機材料でできた分離膜の関心が高まっています。分子と同程度の大きさの細孔を有するゼオライトや分 子ふるい炭素は、吸着性能や分子ふるい作用をもっているため、もっとも注目される膜材料の一つです。

ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩の総称であり、 結晶構造中に1ナノメートル以下の小さな孔が規則的に配列しています。この小さなナノ空間は分子の大きさと同等であるため、「分子ふるい能」と呼ばれる機能をもっています。このゼオライトのユニークなナノ空間を利用した新しい触媒反応・膜分離が注目され、現在、合成法や分離性能に関する研究を行っています。化学工業でもっとも重要な分離プロセスである蒸留の一部を膜分離に置き換えることを目指しています。

SAPO-34の構造(右図:アルミナ基材状に製膜したSAPO-34分離膜)

(2) 多孔性触媒:ゼオライト

多孔性触媒粒子と分子ふるい膜を結合させた新規な反応分離型触媒を提案しています。本触媒は、(a) 選択的に反応物を反応場に供給する、(b)選択的に生成物を反応場から除去することによって反応の高効率化をはかるものであり、メンブレンリアクターと同様な効果が期待されます。通常のメンブレンリアクターに比べ、単位反応器体積あたりの膜面積が 極めて大きいのが特徴です。

また、ゼオライト結晶表面を不活性層で被覆したコア・シェル構造ゼオライト触媒の開発を行っています。本触媒は、外表面での反応を抑制することができます。本触媒が、キシレンの製造において優れたパラキシレン選択性を示すことを見出しています。

ZSM-5結晶の周りにシリカライトコーティング(p-キシレン合成用触媒)

(3) デバイス(規則性メソポーラスカーボン、メソポーラスシリカ)

ナノ細孔材料を用いたデバイスの用途開発の進展が著しく、多機能、高性能化がますます追求されてい ます。高性能化のために特に重要なのが細孔径の制御です。新規な電極材料(EDLS、燃料電池)、触媒担体、吸着剤の開発へ向け、多機能・高性能炭素材料の開発を目指し、シリカ鋳型を用いずに,有機-有機相互作用を利用してメソポーラスカーボンを1段階で合成する手法を開発しました。

有機鋳型法による規則性メソポーラスカーボンの合成

規則性メソポーラスシリカ薄膜 (右図:モノレーヤー)