研究2-1 テンプレートとしての液晶

ナノ構造材料は形状が材料特性に強く影響します。 中でも、本研究グループではナノシートに着目しています。 ナノシートは非常に薄いため(数 nm)、分散性が高い上、ナノサイズ効果を示します。 一方で、厚さの100倍以上の幅のおかげで、分散液から取り出すことや、塗布などによって利用することが、比較的容易なのが特徴です。 従来、層状化合物の剥離によって合成されてきましたが、この手法では非剥離性材料のナノシートを合成できません。

そこで、様々な界面をテンプレートとした異方的な成長によるボトムアップ法が研究されてきました。 実用化に向けてスケールアップが可能で、低コストでナノシートのサイズを制御できる合成法が求められています。 本研究グループでは、液晶をテンプレートとするナノシート合成法(TRAP法)を開発しています。

 

本研究室の卒業生の西澤巧馬さんが、超膨潤ラメラ相の中でスチレンを重合するとナノシートになることを発見しました。これが本研究の再重要論文です。本論文は日本液晶学会より論文賞を受賞しています。

J. Am. Chem. Soc. 2010.

日本液晶学会論文賞

 

その後、疎水性の高分子だけでなく、金や銀などの金属や、ゼオライトなどの酸化物もナノシートすることがわかりました。ゼオライトナノシートに関する論文は日本液晶学会より論文賞を受賞しました。

Angew. Chem. Int. Ed. 2022.

日本液晶学会論文賞

 

2023年には、ナノシート合成法に関する総説が出版されました。特に、剥離ができない物質のナノシートを合成するための、種々の界面やテンプレートを用いた手法を中心に紹介しています。

ChmPlusChem 2023

 

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