研究内容

人類の快適な生活や産業活動の維持のためには、再生医療(Regenerative medicine)、組織工学(Tissue engineering)、薬物送達(Drug delivery)などの医療・ヘルスケアに寄与する技術やプロセスの開発・設計・操作を目的とした研究は不可欠です。
本研究グループでは、「生物の持っている機能を材料として利用する方法を設計・開発」し、また「生物の持っている機能を制御する材料や方法を設計・開発」することで、医療・ヘルスケア分野に貢献することを目指します。また、SDGsを意識した食料生産に関する研究にも取り組んでいます。
※図中、青い文字をクリックするとそれぞれの研究内容の解説へ飛ぶことができます。

 

 

再生医療への貢献

3Dバイオプリンティングに関する技術の開発

病気やケガ、先天的な要因などにより機能が低下したり、機能しなくなった組織や臓器の代替品を、細胞と人工物などを上手く組み合わせて作り出すことを目指すのが組織工学であり、それを使った医療が再生医療です。私達の研究室では、組織工学における重要な技術である、プリンタを使って組織や臓器を3次元印刷する3Dバイオプリンティングに関する技術の開発を行っています。その中では、有機合成に関する知識を活かした、細胞の機能を高めるための新たなインク材料の合成や、プリント過程でのインクの流動状態の理解にもとづいた新たなプリンタの設計、製作などを行っています。

酵素を使った組織工学技術の開発

酵素は動物細胞が生存できる条件下でもさまざまな反応を触媒します。この機能を利用して、動物細胞をゼリーのようなヒドロゲル(独自に合成した材料を使用)のなかに閉じ込めたり、そこで増やした後に取り出したりすることにより組織や臓器の代替物を作り出すための技術の開発を行っています。

 

ロボット技術を応用した組織構築への挑戦 

細胞内外の環境を自在に操作し計測する

細胞や生体の組織は様々な入力情報(刺激)に適切に応答することで複雑な構造を形成し、また、高度な機能を実現しています。この仕組みは未解明の点が多く、その理解のためには精密な応答計測を実現することが重要です。我々は、1 ミクロンほどの微小な対象物をつまむ、回転させるなど器用な操作を行うことが可能なロボットシステムを開発し、細胞の局所への機械刺激や化学刺激を実現しました。この技術の発展は、細胞や生体組織の様々な特徴の解明に役立ち、組織構築方法の確立に貢献します。また、ロボット技術に基づいた自動化されたシステムは、手動では困難な実験を可能するため、これまでにない新たな知見の発見も期待されます。

 

新規バイオデバイスの開発

Lab-on-a-Chip技術の開発および化学・生命科学への応用

‘Lab-on-a-chip’ とは、様々な微細加工技術を利用してマイクロあるいはナノ構造をもつチップ様の微小実験装置を作製する技術です。普段の化学実験室での混合、反応、分離、検出などをスケールダウンしたチップ上で実現します。さらに、生体内で行われる色々な生命活動もそのチップ上に再現できます。私たちは、化学・生命科学への応用を目的とする ‘Lab-on-a-Chip’ 実験装置の開発を行っています。

DDSに資する新規材料・デバイスの開発

生体内で薬剤をはじめとする機能性分子を狙って作用させるために、必要な部位に・必要な量を・必要なタイミングで届けることが求められています。特に、標的部位で機能性分子を徐放し、その機能をコントロールするためには、系全体を俯瞰的に捉える化学工学的な視点が不可欠です。我々は、独自の材料設計およびその材料を使ったデバイスの開発により、遺伝子や薬効分子を、ターゲットとする生体の局所組織・細胞(例えば、ガン細胞や環境因により障害を受けた細胞)に効率的・効果的に送達することに関して研究を行っています。

 

新規バイオマテリアルの設計

生体分子認識を介した生物材料と人工材料の相互作用・融合

生体系では、生体高分子が分子同士の複雑な認識を介して細胞、器官と階層的に組織化し、生体を形作っています。このような生体分子認識を人工系に取り入れ、生体と人工の対話と融合を通じた新しいハイブリッド材料の開発に取り組んでいます。それにより、生命現象のより深い理解(理学)と、生体構成要素-人工材料間のミスマッチを解消した新たな技術開発(工学)の両方を達成し、新しい基礎工学を切り拓くことを目標にしています 。