生体や細胞に穏和なゲル形成を利用する研究

 動物細胞をゲルのような材料のなかに封じ込めたり、体のなかでゲルを形成させる技術は、細胞培養や生体内での組織 再生を考える際に重要な技術です。このゲル形成においては、細胞や生体に対して穏和にゲル形成反応が進行することが求められます。当研究室では、酵素反応 や酵素と同様の反応を進行させる物質を利用してゲルの形成を行い、利用する研究を行っています。


西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼの酵素反応によってゲル化したアルギン酸誘導体溶液

たとえば、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼの酵素反応を適用可能な天然高分子誘導体を合成した後に酵素反応を進行 させると、細胞の生存をほとんど損なうことがない条件でも数秒~数十秒でゲルを形成させることができます。


酵素反応でゲル化した材料に包括された動物細胞の染色写真

このようなゲルを使用すると、細胞包括マイクロカプセルも作製することができますし、細胞を包括したゲルを生体内 で形成させるとその部分にあたらな組織を形成させることも可能になると考えられます。
また、ペルオキシダーゼと類似の作用を有し、血液から抽出されるヘマチンという物質を用いて同様の反応を細胞に穏和に進行させることにも成功しています。

この反応を利用すると、酵素反応によって架橋される官能基を導入したタンパク質と多糖を用意すると、簡単に多糖とタンパク質が結合したゲルを作製すること も可能です。これによって、多糖のみでは得られない機能性を有するゲルや、タンパク質のみでは得られない機能性を有するゲルを作製することができます。