電子顕微鏡観察

電子顕微鏡(SEM)とは?

溶液や固体の内部には皆さんが思っている以上に複雑で、興味のある構造が多く観察できます。それらを観察するために使われているのが走査型電子顕微鏡(SEM)であり、試料の100万倍以上の大きさまで拡大して観察することができます。(1mmの物が1kmまで拡大!!)
SEM装置の中は真空状態であり、エネルギーを与えられた電子が電場中で電子線として集束し、試料表面に照射されます。それにより試料表面からは二次電子が放出され、その強弱を画像化して、モニターを通じて試料表面が画面に映し出されます。
しかし、装置の中は常に真空であるため溶液試料をそのままの状態で観察しようとすると、一瞬にして蒸発してしまうので、ここではプラズマレプリカ膜という試料のコピーを代わりに観察しています。

走査型電子顕微鏡(GHAS室)

プラズマレプリカ膜法

  1. 瞬間凍結させた試料を真空中でカッターで割断する(割りとる)。
  2. 試料の内部構造を反映した微細な凹凸が出現するのですぐにメタン・エチレンを流して放電させると、断面の凹凸を写し取った炭化水素膜(レプリカ膜)ができる。
  3. 試料を溶解させて除去し、レプリカ膜を分離する。
  4. SEMは導電性がないと観察できない。従って導電性をもたせるためレプリカ膜の上にさらに導電性オスミウム薄膜を張る。
  5. このレプリカ膜を十分乾燥させたあとSEMで観察する。

では実際にSEM写真を見てみましょう

梅干し果肉内のNaCl結晶のレプリカ膜SEM写真生クリームのレプリカ膜SEM写真

1μmは1mmの1/1000の大きさです。
どうです?みなさんがよく知っている正方形のNaClの結晶が見えてきましたね。でもここで疑問がわいてきます。この正方形の結晶は最初から正方形なのか?液体が固体になる瞬間はどうなっているのか?
プラズマレプリカ膜法と電子顕微鏡観察を組み合わせることで、こういった謎を追究していくことができるのです。

<関連項目>
結晶の成長化機構
溶液の微細構造

右側の写真のようにプラズマレプリカ膜法では、生クリームの泡のような液体の中 の気泡までも観察することができます。
実際の企業の中でも、できあがった製品の品質を確認したり、製品と不純物の分離がしやすい形の結晶を作る目的で利用されることが多い研究テーマなのです。
メーカーによって口当たりが違うもの、たとえばビールやアイスクリームなどの製品の違いを調べてみるのも面白いかもしれません。


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