私達のグループは、気体と液体の高圧相平衡関係をもとにして環境問題に取り組んでいます。
1. 低質なエネルギー回収と発電
火力発電で無駄な熱が捨てられてる?これを再利用しよう!
一般に火力発電所における火力から電力への発電効率は約40%で、残りの60%は無駄な熱(排熱)として捨てられています。現在は省エネ、省エネと叫ばれており、こんな無駄な熱をそのままにしておいていいはずがありません。そこで、私たちは、この排熱(特に環境温度レベルに近い中低温の排熱)を効率的に再び電力へ変換する技術を提案し、環境影響の少なくまた効率的に熱を変換できる熱媒体を探索することを目的としています。
再び電力に変換できるの?
具体的に熱を回収して発電を行うシステムがあるんです。カリーナサイクル(右図)といって、発電所のガスタービン(ガスを空気と燃焼させて、あつあつの燃焼空気でタービンを回転させると、発電機が動いて電気が発生します)で発電した後の排ガス(非常に熱いガスで、このまま捨てたらもったいないですよね?)を利用して、ボイラーで混合物の作動流体(気体と液体を合わせて、流体といいます)を排ガスとの熱交換により熱して蒸発させ、できた蒸気からタービンを回して発電させようという方式です。作動流体として、アンモニア-水の混合物が用いられてきましたが、装置の腐食の問題や私たちの注目している中低温からの排熱には適さないため、環境影響の少ない有効な熱媒体を開発しようとしています。
どうやって新しい熱媒体を探すの?
具体的には候補となる混合物(カリーナサイクルの作動流体は混合物が使われます)について、50 ℃、100 ℃、200 ℃での高圧力(0.7〜10 MPa(7〜100 気圧)ぐらいまで)の範囲で気液(気相と液相の)平衡関係(平衡状態の蒸気圧と、沸点の低い方の成分の気相及び液相の組成の関係)を測定し、PVT関係(どんな圧力、温度で作動させると一番効果的?)や熱物性(どれだけ熱を回収できるか?)の推算を行い、カリーナサイクルに適用できるか考察を行っています。
2. 地層中高圧下の地下水の相挙動
地下に核廃棄物を埋めるの?
現在我が国では、原子力発電により排出される核廃棄物を地下500 m付近に埋めて処分する地層処分が注目されています。この処分方法は、右図のような処分容器に核廃棄物をガラスで固めて保存し、その周りを粘土質の層で覆うという何重にもバリアを施された非常に安全性の高い方法です。しかし、長い年月後処分された環境条件によって、もしかしたら地下水の影響で容器が壊れてしまい放射能が漏れてしまうかもしれません。そこで、地下水を主成分である水と二酸化炭素の2成分系と考えて、地中処理地点の温度・圧力に対応する条件での水と二酸化炭素のふるまいを明らかにし、処分容器をつくるための基礎的なデータとするのです。
どうやって調べるの?
私達のグループでは、すでにあるこの系の温度圧力関係をもとに可視式高圧セルを用いて、この水−二酸化炭素の様々な温度圧力条件における相挙動を観察しました。その結果、低温・高圧になると写真1のような固体(ハイドレート・詳しくはハイドレートグループの説明を見てください)ができることがわかりました。また、水と二酸化炭素の状態から圧力を上げていくと、二酸化炭素が液体になり(写真2)、さらに圧力を上げると液体二酸化炭素が水より重くなって水が上になるという興味深い現象(密度逆転・写真3)を観察できました。