分子集合系の多彩な機能 ー発現原理の解明と応用ー


  • 溶媒和概念の普遍化と分子集合系の物質分配機能の横断的解析

分子集合系に最初から存在するものを「溶媒」とみなし、後から入ってくるものを「溶質」として、分子集合系における物質分配を「溶媒和」と捉え直します。この概念に基づいて、溶液統計力学理論と分子シミュレーション技法の新規構築と拡張を行い、通常の溶液・超臨界流体・高分子への物質溶解のみならず、脂質膜やミセル、タンパク質への分子(基質)の結合、さらには、電子の付加(還元)までを、横断的に解析しています。


  • イオン液体のガス吸収と電気伝導

イオン液体は、カチオンとアニオンの混合溶媒であり、様々なガスの吸収媒体として、また、電池の電解液として、近年大きな注目を集めています。イオン液体の種類は、カチオン・アニオンの組合わせによって無数と言われており、現実運用にはスクリーニングが欠かせません。分子間相互作用の知見に立脚し、溶液理論と分子シミュレーションを十全に活用するスクリーニング法の開発を行っています。


  • ミセルや脂質膜の界面ソフト性と物質分配

界面活性剤や脂質のような両親媒性分子は、ミセルや二重膜に自己組織化し、日常生活にもなじみの深い機能を発現します。ミセルや脂質膜は、周りの水とはっきり分離しているわけではなく、逆に、水が相当貫入し、疎水部と親水部も、しばしば入り混じった状態でゆらいでいます。このようにミセルや脂質膜の界面がソフトであることが、物質分配機能にいかなる影響を及ぼしているかを、溶液理論と大規模分子シミュレーションで解析しています。


  • 溶媒和エネルギー変換を用いた分子と集合系構造の制御

タンパク質のような機能性分子の構造は、溶媒と(自由)エネルギーの交換をしながら、大きくゆらいでいます。そこで、溶媒和エネルギーの変調が、共溶媒を加えるなどの比較的安価な操作で可能であることに着目し、溶媒効果の制御によって、機能性分子の構造制御を行うための指針を、溶液理論と大規模分子シミュレーションを用いて探索しています。