分子集合系計算科学セミナーを 7/26 に開催

題目:吸着等温式の統一理論にむけて

講師:清水青史(英国ヨーク大学化学科)

日時:7月26日(金)16:00-

場所:ハイブリッド開催(大阪大学豊中キャンパス基礎工学研究棟講義室A403,Zoom)

要旨:吸着等温線は界面物理化学の基礎のひとつであるのみならず、様々な産業における材料の基本的物性である。現在に至るまで100以上の等温式モデルが提唱されており、その多くは理想化・単純化された吸着過程に基づいている。有名なLangmuir等温式は均一な表面結合部位の分布を仮定し、その上への多層吸着を許容したBETとGAB等温式は日常的に応用されている。特筆すべきは、BET、GAB等温式は、それらの仮定を破る不均一な系(食品、粉体、セメント等)への吸着線のfittingに広く成功を収めている。故に、Langmuir, BETやGAB等温式のあらわす真の吸着機構は何だろうか?吸着理論を理想化された結合モデルから解放し、現代の分子シミュレーションと同じ言語(動径分布関数など)で基礎付けする事は出来ないだろうか?さらに、吸着モデル構築による各論ではなく、吸着等温線の一般理論を構築することは可能だろうか?このような視点から、気体と溶液からの吸着の一般理論を、統計力学揺らぎ理論に基づき構築した。具体的には、(1) Gibbs等温式の、アンサンブルに基づく任意の界面計上への一般化、(2) 等温式の傾きと吸着分子の数揺らぎの関係を(1)と相補的な基礎として導入、(3) 吸着等温式の一般的導出法((1)と(2)を微分方程式として解く)を確立した。それらを遂行するにあたり、熱力学変数変換の煩雑性を解決する統計的変数変換法を開発した。(1)-(3)により、等温式を数揺らぎと界面Kirkwood-Buff積分から系統的に導出し、Langmuir、BETとGAB式のあらわす真の物理的意味を明らかにし、IUPACによる等温式分類の機構を説明することに成功した。

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世話人:笠原健人(大阪大),石井良樹(北里大),肥喜里志門(立命館大),吉田悠一郎(大阪大)

分子集合系計算科学セミナーHP: https://sites.google.com/view/bunsisyugo/