【プレスリリース】\76倍の活性向上!/ 高い耐硫黄性を示す新規水素化触媒の開発に成功

当研究室の成果が「ACS Catalysis」誌に掲載され、その成果のプレスリリースを行いました。

論文タイトル:“Robust Ruthenium Phosphide Catalyst for Hydrogenation of Sulfur-Containing Nitroarenes

著者名:Hiroya Ishikawa, Naoki Nakatani, Sho Yamaguchi, Tomoo Mizugaki, Takato Mitsudome

論文誌 ACS Catalysis, 2023, 13, 5744–5751.

URL先 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscatal.3c00128

成果の概要 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230417_1

概略

水素化反応は化学工業において最も重要な反応の一つです。しかしながら、従来の水素化触媒は硫黄化合物による触媒被毒によって活性が著しく低下することが問題となっていました。したがって、高い耐硫黄性を示す水素化触媒の開発が求められています。

我々は、ルテニウムナノ粒子をリン化すると、水素化能と硫黄耐性が著しく向上することを見出しました。硫黄含有芳香族ニトロ化合物の水素化反応において、開発したリン化ルテニウム触媒(Ru2P/SiO2)はリン化していなルテニウム触媒(Ru/SiO2)に比べ76倍の活性を示しました。Ru2P/SiO2触媒は常圧水素下という温和な条件において、様々な種類の硫黄含有芳香族ニトロ化合物の水素化を高選択的に促進することができます。

硫黄含有芳香族ニトロ化合物のアニリン類への変換は、医薬品合成プロセスにおいて重要な反応です。本触媒は種々の医薬中間体の合成に適用することが可能でした。現在、これらの反応は鉄や亜鉛といった金属や亜ジチオン酸ナトリウムなどの有毒な還元剤を用いて行われており、反応に伴って量論量の廃棄物が副生することが問題となっています。一方、開発した触媒を用いた反応系は無毒な水素ガスを還元剤として用いており、副生物は水のみです。本触媒は持続可能な医薬品合成プロセスの開発に貢献すると期待されます。

本研究成果は、米国化学会誌「ACS Catalysis」(オンライン)に、4月13日(木)午後8時(日本時間)に公開されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究では、高い耐硫黄性を示す水素化触媒の開発に成功しました。硫黄化合物による触媒活性の低下は様々な化学プロセスで問題となっています。本研究で得られた知見は、触媒被毒に対して耐性を持つ新規触媒の開発及び持続可能な化学プロセスの開発に貢献すると期待されます。