当研究室の研究成果がプレスリリースされ、海外サイトに転載されました!
論文タイトル:“Support-Boosted Nickel Phosphide Nanoalloy Catalysis in the Selective Hydrogenation of Maltose to Maltitol”
著者名:Sho Yamaguchi, Suh Fujita, Kiyotaka Nakajima, Seiji Yamazoe, Jun Yamasaki, Tomoo Mizugaki, Takato Mitsudome
論文誌 ACS Sustainable Chemistry & Engineering, 2021, 9. 6347-6354.
・大阪大学ホームページ:https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210422_2
・海外サイト: EurekAlert!, AlphaGalileo, Mirage News, Scienmag, Bioengineer.org, Phys.org, Press-News.org, Nanowerk, Science Codex, SciFi News Hubb, 4 State NEWS, 15 Minute News, sNEWSi, ohmTown, NewsLocker, AZO NANO, 7thSpace, NEWS CENTRAL SITE, Uncover reality, SciFi Insight, ABT, Amkio, NEWS BREAK, Agenparl
概略
マルトース(麦芽糖)の水素化により得られるマルチトール(還元麦芽糖)は、食品添加物や甘味料等として利用される高付加価値の機能性化学品です。現行のマルチトール製造法では、一般にニッケルとアルミとの合金を作り、そのアルミだけを塩基により溶かすことで、ニッケルをスポンジ状にして高表面積化した、スポンジニッケルが触媒として用いられています。しかし、この触媒は、大気中で自然発火性があるため取り扱いが難しい上、活性が低いという問題を抱えています。近年では、より高活性な貴金属触媒であるルテニウム触媒も用いられていますが、ルテニウムは高価で希少な金属です。したがって、温和な条件下でマルトース水素化反応を促進する、安定で高活性な環境調和性の高い非貴金属触媒系の開発が求められていました。
本研究グループでは、ニッケルとリンを合金化した合金ナノ粒子を無機物であるハイドロタルサイトに担持したnano-Ni2P/HTを開発し、この触媒が温和な条件下でマルトースを高選択的にマルチトールへと還元できることを見出しました。また、世界で初めて、常温下(25℃)において実施することにも成功しました。さらに、開発した触媒は高濃度のマルトース溶液(>70 wt%)にも適用可能な上、反応液からのろ過により簡単に分離ができ、回収した触媒を再びマルトースの還元反応に用いても触媒の活性低下は見られず、繰り返し使用可能であることから、実用的な観点からも非常に有用性の高い触媒です。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
現行のマルチトール製造で用いられる非貴金属触媒(ニッケルやコバルトなど)は、発火性があるため取り扱いが難しく、活性が低いことから高温・高水素圧を必要とします。一方、今回開発したリン化ニッケルナノ粒子触媒は空気中で安定に取り扱うことができ、温和な条件下でマルトース水素化反応が効率的に促進されます。さらに、この触媒を応用することで、現行の実用水素化反応を代替する、安全かつ環境に優しい次世代型触媒プロセスの開発の提案につながると期待されます。