新規生産プロセスの開発:初代培養から培養組織が生産できるまで,数回の培養の継代が培養面を広げるために必要となり,そのたびに,人手により酵素(トリプシン)処理を伴う接着細胞の培養面からの剥離,トリプシン接種を繰り返すといった培養面への接着の制御を行っている(別紙2参照).そこで,トリプシン(剥離剤)とトリプシンインヒビター(剥離停止剤)の連携使用により,接着制御を試みる.さらに,最適条件での培養の継代を,自動的に行うことのできる組織生産容器を設計し(別紙2参照),組織生産の自動化を試みる.培養容器の設計指針としては,培養面積が拡大可能,培養経過が観察可能,簡易的構造による低価格化などである.
表皮シートの生産は,自家移植を前提とする場合,病院での患者からの皮膚の採取やウイルステスト,工場における細胞分離,初代培養,継代培養,生産培養そして出荷といった一連の工程を経て初めて臨床可能なシートを生産できる.このうち培養過程は,労力,時間ともに最も多くかかる工程であるにもかかわらず,そのほとんどが人手によるものである.その結果,シート生産にかかわる経費のほとんどは人件費となり,医療費の高騰を招いている.
そこで,細胞の培養面からの剥離および接着を制御することにより,数回の培養の継代培養および表皮シート生産を自動的に行うことため容器を試作する.また,この容器は,先に試作した小型培養容器を発展させたもので,細胞観察ツールを付設されており,理論計算に基づく培養の最適化を行うことができる.さらに,培養時のコンタミネーション等のアクシデントなどを推定するシステムを構築することにより,完全に自動化された表皮シートの生産工程を構築できる.