微生物に関する研究内容

・生物反応工学グループの研究概要

・自然光照射下で有効な二酸化チタン光触媒の開発
・微生物のストレス応答に関する研究
・代謝制御による有用物質生産の効率化
・微生物の接着制御に基づく反応場の設計


  •  自然光照射下で有効な二酸化チタン光触媒の開発
       
           銅含有二酸化チタン薄膜の光殺菌メカニズム
     近年,鳥インフルエンザや新型豚インフルエンザウイルス,さらに口蹄疫ウイルスなどの感染症が社会問題として取りあげられています.こうした感染症への対策として,本研究では,無機金属・光活性触媒の有する機能を利用した抗菌・殺菌プロセスの開発を行っています.例えば二酸化チタンは波長410 nm以下の光を照射されることで各種活性酸素種(ROS)を発生するので,これを利用した,有害微生物やウイルスの不活性化プロセスの規格化を目指しています.また,二酸化チタンを蛍光灯などの自然光下でも有効に利用できるように,金属酸化物とのハイブリッド型光触媒の開発も進めています.
        
     微生物のストレス応答に関する研究
       本研究では,二酸化チタン光触媒などが引き起こすストレスに対して,大腸菌や麹菌などの微生物細胞が行う生理応答を解析しています.微生物に死滅しない程度にストレスをかけると,思いもよらない特性や能力を持った種類が現れます.ストレス耐性を持つもの,中枢代謝活性や運動性(微生物も運動します)が大きく変化したものなどです.これらの種類の微生物から得られた解析結果を基に,遺伝子組換え技術などを用いた微生物細胞の改変により,アミノ酸発酵や組換えタンパク質の生産効率の向上を目指しています.
      代謝制御による有用物質生産の効率化
       微生物を用いた発酵生産は,酒や醤油,味噌といった醸造産業に起源をもち,わが国が伝統的に世界をリードしてきた分野の一つです.そのなかでもアミノ酸発酵生産は,日本で始めて微生物を用いた発酵生産方法が確立され,日本国内外で盛んに研究が行われています.本研究では,ストレス応答から発見した新規なストレス応答遺伝子を組換えることで,目的物質の原料となる中間代謝産物を蓄積させる「代謝のダム化効果」により,発酵生産の効率化を行っています.また,細胞内の代謝改変に加えて,トランスポータと呼ばれる細胞内外への基質の取込みや生産物の排出をコントロールすることのできるタンパク質を利用し,さらなる効率化を目指しています.
    微生物の接着制御に基づく反応場の設計
     
     
     微生物の固体表面への接着性制御は,一部の生産系を除いて従来の有用物質発酵生産においては生産効率との関連性が希薄であり,これまで十分に検討されてきませんでした.しかしながら,今後の微生物を用いたバイオテクノロジー分野の展開として,土壌・河川・海洋といった反応場での開放系利用が望まれています。微生物の能動的な付着性制御は,有害物分解の反応性や希少資源の回収などを効率化するために重要な因子であると考えています.本研究では,プラスミド等の外来遺伝子組換えを使用せず,染色体上の遺伝子欠損手法に基づき接着性制御を行うことで,開放系での微生物利用を想定した新規なバイオコントロール技術の開発を目的としています.
        


  • ・生物反応工学グループの研究概要