水は人類を含む総ての生命の存続と、人類の生産活動はもちろん地球上のほとんど総ての自然現象をつかさどっている。我々が水とどう付き合っていくか・・・水を知り、そのポテンシャルを利用し、また大きな水循環システムに戻していく・・・水とどう付き合っていくかが人類にとって21世紀の最大の課題である。

 大阪は「水の都」と呼ばれるように古くから地域全体として水になじみがあり、また大阪大学においても水の基礎物性に関する研究は理学研究科の研究グループをはじめ、環境エネルギー問題と水との関連を先駆けた基礎工学研究科、治水・利水はじめ豊かな社会基盤づくりを手掛けた工学研究科など世界的研究成果を挙げた実績を持っている。環境問題との関連で「水の柔らかい機能」に注目した新規な科学技術の展開が期待されている現在、これまでの大阪大学の科学的歴史を踏まえ、水素結合の持つ柔らかい性質が関与する諸現象(分子から流体まで)を解明し、それを基に水の多面的機能を有効活用する科学技術を提案し、また水の大循環に戻し水と共生するための総合的な科学技術を確立することが重要でる。 
 
 本プロジェクトは水の可能性を新しい視点で捉え、「科学する・活用する・共生する」という3つの柱を有機的かつ相補的に融合し、理学・基礎工学・工学3研究科をはじめ関連する学内研究機関による大阪大学発の総合的な「アクア」科学技術として、「地域に根ざし世界に伸びる」理念を実践するものである。





 水の惑星と呼ばれるように、水は地球上のあらゆる環境に対応しながら、固体・液体・気体と状態を変化させ、連綿と動植物の生命活動を司ってきた。しかし、20世紀後半、地球レベルの 環境問題がクローズアップされ、地球温暖化問題を始め、砂漠化による緑の急激な減少、あるいは化学物質による河川および海洋汚染、さらには人口増加による水資源問題も人類にとって避けては通れない重要課題であることが明らかになってきた。

 日常生活において水はもっとも馴染深い物質であり、科学的にも古くから研究対象として取り扱われ、その多くの特異な物性が明らかにされている。特に水素結合と呼ばれる分子間相互作用が支配する水の熱的性質、水和性、界面エネルギー、自己組織化などは、まさに古くて新しい科学として現在でも基礎科学の中心的な分野を形成している。また、水の応用分野でもその特異な性質に着目して、水を材料とし、また反応・分離場として活用した研究が広範な科学技術領域を網羅している。さらに大気を循環する水は、エントロピーの輸送物質として重要な役割を担いながら生物を育て海洋を育み、沿岸域に暮らす我々に無限の恵みを与え続けている。水そのものを知り、水を有効に利用し、水を循環し水と共生する・・・水とどう付き合っていくかが人類にとって21世紀の最大の課題である。

 水に関する基礎科学をさらに深化し、その成果を取り入れた活用技術を開発し、水との共生を図るためには、本学の理工学研究体制の特徴であり、それぞれ独自の文化を育んできた理学・基礎工学・工学の3研究科を鼎に、関連する学内研究機関を有機的に組織して協同研究を推進する大阪大学発のプロジェクトを成功させることが不可欠である。



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3つの柱
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