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生物機能材料設計学グループ

准教授: 馬越 大, 助教: 島内 寿徳

 


 

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URL: http://www.cheng.es.osaka-u.ac.jp/kuboilabo/index-j.htm

E-mail: kuboi*cheng.es.osaka-u.ac.jp   [] E-mailアドレスの*@に変えて下さい

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 ようこそ大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻生物機能材料設計学講座のホームページへ。 下記の情報を掲載しておりますので、是非ご覧下さい。


最新情報

更新履歴

 

Membrane Stress Biotechnology(MSB)研究会

 研究会のあらまし、これまでの行事案内、会則などの詳しいことはこちら。

 

研究内容

 

メンブレン・ストレスバイオテクノロジーの創成

 


   生物機能材料設計学グループでは、メンブレン・ストレスバイオテクノロジー(Membrane Stress Biotechnology: MSB)という新たな研究領域を開拓しております。生体膜は外界に対する細胞の最前線であり、また、細胞が応答して生存するための最後の砦でもあります。細胞は熱やpH変化、酸化などの様々なストレスにさらされた場合、時にそれらは細胞を死に至らしめます。生体膜はこれらのストレスに応答し、環境素子を取り込み、種々様々の新たな秩序構造を形成することが私たちの研究からわかってきました。MSBの核心は、細胞膜の有する機能の本質を理解し、Break-down的手法により材料設計/プロセス設計に活かすと共に、Build-up的手法により、ストレス条件下で動的に発現する細胞膜の潜在的機能をモデル化して、膜関連疾病やその原因とされるアミロイドペプチド(Abb2-ミクログロブリンなど)の生理的意味や、アルツハイマー症、透析症などの根本的原因の解明・診断・治療などに貢献することです。そのためには既存の学問体系(GenomeProteomeなど)では十分ではありません。細胞機能が集積し、ストレスに応答して機能進化を果たす生体膜に関する網羅的な情報(Membranome)を体系化する必要があります。そして、これらの研究(Membranomics)の中核を担うナノバイオ材料であるLEM-Unit(後述)が、両親媒性分子がつくる脂質膜二重層の閉鎖系小胞、リポソームなのです。

 

モデル生体膜リポソームのストレス応答機能とその魅力

 


リン脂質二重層からなるリポソームは、古くからモデル生体膜として利用されています。一連の研究において、私たちはこの単純なモデル生体膜がストレス条件下において、通常の条件では見られない各種機能を誘導することを示してきました。例えば、シャペロン機能もその一つであり、ストレス負荷により構造異常化(unfolding)したタンパク質と相互作用し、GroEL/GroESなどの分子シャペロンと同様に、各種タンパク質の構造状態を正常化(refolding)する事が可能です。さらに、水性二相分配法、固定化リポソームクロマトグラフィー、誘電分散解析法を用いた実験により、この様なシャペロン様活性が、ストレス条件下におけるタンパク質とリポソームの局所的疎水性/水素結合安定性に依存することを示し、リポソーム膜がタンパク質の構造状態を識別して相互作用を制御している事を示しました。また、ストレス負荷条件下におけるタンパク質と膜の構造のゆらぎの強さに応じて、タンパク質の膜透過や膜融合等の現象を誘導している事が示されました。この様な機能を有するリポソームを有効活用することにより、現在社会問題になっているアルツハイマー症等の膜異常疾患の機構解明に肉迫できるのではないかと期待を寄せています。

 

LIPOzymeLiposomeを基盤とした新材料設計〜生体膜プロセス化学の基盤技術

 


  LIPOzyme (Liposome+Enzyme)機能とは、Liposomeの発現する酵素様機能の事であり、外部環境変動(ストレス)により、各種の触媒機能(例えば、(i)分子認識機能、(ii)構造形成能、(iii)化学変換能など)を顕在化させる能力を指します。このLIPOzyme機能を基礎技術として、(i)Ab/CuCholesterol酸化酵素様機能、(ii)One-Pot型抗酸化酵素(SOD/CAT 共発現触媒)(iii)加水分解酵素(a-Chymotrypsin)などの開発例を報告しています。驚くべきことに、本来は酵素活性が無い要素物質(ペプチド断片やリガンドなど)がリポソームにリクルートされ、集積し構造化される事により、天然酵素に匹敵する活性(LIPOzyme機能)を発現できるのです。リポソーム表層における疎水性相互作用/水素結合の安定性を始めとする各種動的相互作用を合理的に制御して、天然の生体膜がそうである様に、生体膜内外の環境変動に応答しつつ,物質認識(分離)・触媒反応・高選択的物質輸送を制御するような、次世代型の生体膜プロセスに展開できると期待されています。リポソームをコア材料とする事により、生体物質さらには生体系そのものの機能にInspireされた新規な材料調製も可能である事を示唆しています。

 

 

メンブレン・ストレスバイオテクノロジーの展望〜Alzheimer症解明に向けて〜

 


このMSBを構築する上で、必須不可欠な要素、すなわち、生命機能の最小単位として、生命-環境系が一体となった系(Life-Environment Minimum Unit; LEM-Unit)を定義しました。このLEM-Unitの条件は、他のLEM-Unitや地球環境系の他のUnitとも調和して共存し、水環境を必須な要素として取り込み、複合化できることです。生命の基本的な単位である細胞を構成する要素は沢山ありますが、LEM-Unitに相当するものは、脂質二分子膜からなるリポソーム(モデル生体膜)です。それは生命にとって不可欠な水環境を必須の要素として、本体の表層や内部に取り込んだしなやかな閉鎖系膜構造を有するからです。故に、私たちはリポソームをLEM-Unitとして選択しました。生命機能の本質的な特徴は、ダイナミックに自己変革する機能性界面(生体膜)構造にある事も、LIPOzymeの研究を通して明らかになってきました。LEM-Unitはわずかな環境のエネルギー変動に応答できる「ゆらぎ」を内包しているからこそ、他のUnitと相互作用できます。したがって、物質・エネルギー・情報の変換/伝達機能を兼ね備えた自己発展・自己駆動素子(Self-Driven Unit)ともいえます。これが非線形・非平衡系ダイナミクスにより、種々様々の構造分化・パターン(秩序構造)形成を誘導すると考えられます。

アルツハイマー症や透析症は、現在は、原因タンパク質の構造異常化が鍵であるとされています。私たちは、生命の基盤である生体膜の異常こそが、Abの構造異常化を誘導すると考えており、生体膜異常の直接的な検知・修復システムをLEM-Unitを用いて設計開発するべく研究を進めております。

 

 

References (main papers in recent 3 years)

(1)   Hiroshi Umakoshi, Keishi Suga, Huong Thi Bui, Masato Nishida, Toshinori Shimanouchi, and Ryoichi Kuboi, Charged Liposome Affects the Translation and Folding Steps of in vitro Expression of Green Fluorescent Protein, J.Biosci.Bioeng, 108(5), 450-454 (2009)

(2)   Huong Thi Vu, Toshinori Shimanouchi, Hiroshi Umakoshi, Ryoichi Kuboi, Catechol derivatives inhibit fibril formation of Ab peptides from Alzheimer’s disease, J.Biosci.Bioeng,, in press.

(3)   Toshinori Shimanouchi, Hiroshi Umakoshi, Ryoichi Kuboi, Kinetic Study on Giant Vesicle Formation with Electroformation, Langmuir, 25(9), 4835-4840 (2009)

(4)   T.Shimanouchi, E.Oyama, H.Ishii, H.Umakoshi, R.Kuboi, Membranomics Research on Interactions between Liposome Membranes with Membrane Chip Analysis, Membrane, 34 (6), 342-350 (2009)

(5)   T.Shimanouchi, P. Walde, J.Gardiner, S.Capone, D.Seebach, R.Kuboi, Inversion of the Configuration of A Single Stereocenter in A b-Heptapeptide Leads to Drastic Changes in Its Interaction with Phospholipid Bilayers, ChemBioChem, 10, 1978-1981 (2009)

(6)   Huong Thi Bui, Hiroshi Umakoshi, Kien Xuan Ngo, Masato Nishida, Toshinori Shimanouchi, and Ryoichi Kuboi, Liposome Membrane Itself can Regulate Gene Expression in Cell Free Translation System, Langmuir, 24(19), 10537-10542 (2008)

(7)   Le Quoc Tuan, Hiroshi Umakoshi, Toshinori Shimanouchi, Ryoichi Kuboi, Liposome-Recruited Activity of Oxidized and Fragmented Superoxide Dismutase, Langmuir, 24, 350-354 (2008)

(8)   Hiroshi Umakoshi, Kengo Morimoto, Yuji Ohama, Hideto Nagami, Toshinori Shimanouchi, Ryoichi Kuboi, Liposome Modified with Mn-Porphyrin Complex Can Simultaneously Induce Antioxidative Enzyme-Like Activity of Both Superoxide Dismutase and Peroxidase, Langmuir, 24, 4451-4455 (2008)

(9)   Makoto Yoshimoto, Yuya Miyazaki, Ayumi Umemoto, Peter Walde, Ryoichi Kuboi, Katsumi Nakao, Phosphatidylcholine Vesicle-Mediated Decomposition of Hydrogen Peroxide, Langmuir, 23, 9416-9422 (2007)

(10)               Seiichi Morita, Yuya Hamano, Ryoichi Kuboi, Effects of Fatty Acids on Interaction between Liposome and Amyloid b–Peptide. Membrane, 32, 215-220 (2007).

(11)               Toshinori Shimanouchi, Peter Walde, James Gardiner, Yogesh R. Mahajan, Deter Seebach, Anita Thomae, Stephanie D. Krämer, Matthias Voser, Ryoichi Kuboi, Permeation of a b-Heptapeptide Derivative across Phospholipid Bilayers, Biochim.Biophys.Acta, 1768, 2726-2736 (2007)