〜Montmorillonite〜
Ti-mont
次に、水溶媒中で特異な触媒作用を示すことが報告されているスカンジウム(Sc)に注目し、Na型モンモリロナイトを水中にてSc(OTf)3で処理することで、スカンジウム固定化mont (Sc3+-mont)を合成した。Sc K殻EXAFSの解析結果と、XRDから求めた3.6
A の層間距離より、Sc3+-mont中のスカンジウム種は、6個の水を配位子としシリケート層間に単核で固定化されていることがわかった[6]。
Sc3+-montを触媒に用いると、ステロイドなどの合成中間体として有用な1、5-ジカルボニル骨格を得る重要な炭素−炭素結合形成反応である1、3-ジカルボニル化合物のエノンによるマイケル反応が、水中で極めて効率よく進行する(式2)。
Sc3+-mont存在下(2mol% Sc)、メチルビニルケトンと2-オキソシクロペンタンカルボン酸エチルの反応は水溶媒中30℃という穏和な条件下で速やかに進行し、相当するマイケル付加体が高収率で得られる(表1)。
Sc3+-montは、水中で機能するルイス酸として知られるSc(OTf)3 より高活性であり、種々の1、3-ジカルボニル化合物の反応に適応可能である(表2)。Sc3+-montが水中で機能するユニークな固体ルイス酸触媒となるのは、モンモリロナイトの親水性およびScカチオンの性質に起因している。すなわち、montは水中で膨潤し、層間のScと基質が十分に接触できるようになり、さらにSc(H2O)6の強いルイス酸性および水配位子の大きな交換速度定数から、mont層間のScは水中でルイス酸点としての機能を発揮する。
さらに、Sc3+-montは、無溶媒条件下においても極めて高い触媒活性を示し、2-オキソシクロペンタンカルボン酸エチルとメチルビニルケトンの100 mmolスケールの反応ではスカンジウム基準のターンオーバー数は2時間で1、000を超える(式3)。この値は、現在マイケル反応で報告されている他の触媒系に比べて最も高い。
Sc3+-mont
また、アリルトリメチルシランを用いたカルボニル化合物のアリル化反応(桜井−細見反応)には、Na型モンモリロナイトを硝酸銅水溶液で交換して調製した銅イオン交換モンモリロナイト(Cu2+-mont)が有効であることを見出した(式4)。
無溶媒条件下でのベンズアルデヒドとアリルトリメチルシランの反応において触媒効果を検討したところ、 Cu2+-montは、高収率で相当するホモアリルシリルエーテルを与えた。一方、Cu-SiO2、Cu-Al2O3、Cu-ハイドロタルサイト等の金属酸化物固定化銅触媒、および触媒前駆体である硝酸銅単独では、全く反応が進行しない。さらに、Cu2+-montは、反応溶液から容易に分離・回収でき、活性・選択性を保持したまま再使用できる。
以上、種々の金属カチオンで交換したモンモリロナイト触媒を用いた反応系では、触媒は容易に反応液から分離・回収でき活性の低下なく再使用が可能である。さらに、Mn+-montは、無溶媒条件下においても、マイケル反応、桜井−細見反応等の炭素−炭素結合形成反応を進行させる新しいタイプの固体ルイス酸触媒として機能する。
1) Green Chem. 2000, 2, 157.
2)
Chem. Commun. 2002, 690.
3) Tetrahedron
Lett. 2003, 44, 9205.
4) Tetrahedron Lett. 2001, 42,
8329.
5) Chem. Lett. 2003, 32,
648.
6)
J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10486.
Cu2+-mont